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仕事中のケガに健康保険は使えない
——病院で10割払ったお金の取り戻し方

仕事中にケガをして病院に行くと、窓口で「これは労災ですね。ではいったん全額お願いします」と言われることがあります。 3割ではなく10割。骨折なら数万円がその場で出ていきます。

ここで多くの人が「会社が労災にしてくれないのでは」「自腹で終わるのでは」と不安になります。 結論から書くと、その10割は後から返ってきます。 戻ってくる仕組みと、そのために必要な紙が決まっているだけです。順に説明します。

1. なぜ健康保険が使えないのか

仕事中・通勤中のケガは労災保険が見る、 それ以外の病気やケガは健康保険が見る、という切り分けになっています。 労働局も「労働災害に健康保険は使えません」とはっきり書いています。

だから病院の窓口では、健康保険証を出して3割で会計する、という流れが使えません。 労災の手続きがその場で済んでいなければ、いったん全額を預かる形になります。健康保険が効かない=自己負担になる、ではありません。払う先が健康保険から労災保険に変わるだけで、 労災と認められれば治療費の自己負担は最終的にゼロです。

2. 病院が「労災指定」かどうかで手続きが変わる

分かれ道はここだけです。運ばれた病院が労災病院・労災指定医療機関かどうか。

つまり10割を払わされるのは、指定外の病院にかかったか、 まだ様式第5号が病院に届いていないかのどちらかであることがほとんどです。 会社が労災を認めていないから、とは限りません。まずそこを確認してください。

3. 請求できる期間は2年

立て替えた治療費(療養の費用)は、費用の支出が確定した日の翌日から2年で時効になります。 「様子を見てから」と置いておくと請求権そのものが消えるので、 領収書は捨てずにまとめておいてください。

4. うっかり健康保険証を出してしまったときは

労災だと分からずに健康保険で受診してしまうことはあります。 この場合は後から労災へ切り替えられます。 受診した病院と、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)に 「仕事中のケガだったので労災に切り替えたい」と連絡してください。

病院がまだ健康保険に請求していない段階なら、病院側で処理し直してもらえることが多いです。 すでに請求済みなら、健康保険が負担した分(7割)をいったん自分で返し、 その後まとめて労災に請求する形になります。手間は増えますが、取り返せます

5. 休んだ日の給料はどうなるか

ケガで働けなかった日については、休業(補償)等給付が出ます。

「最初の3日は自腹」ではありません。出す先が会社になるだけです。 ここを知らないと、会社が何も言わないまま3日分が消えます。

6. 会社が証明してくれない場合でも請求できる

請求書には事業主が証明する欄があります。ここで 「会社がハンコをくれないと出せない」と思って止まってしまう人がいますが、そうではありません。

厚生労働省は「労災保険の請求は、事業主や医療機関の証明がなくても受け付けます」と明示しています。事業主証明が得られない場合は証明欄が空欄のままでも、本人が労働基準監督署に直接請求書を出せます。 労災かどうかを決めるのは会社ではなく労働基準監督署です。

7. 会社が報告しないのは「労災かくし」

労働者が労働災害で死亡または休業したときは、会社は労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出しなければなりません (労働安全衛生規則97条)。

これを出さない、または嘘を書いて出すのが「労災かくし」で、 労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金の対象になります。 「事を大きくしたくないから、治療費はこっちで直接払う」という収め方は、 親切に見えて会社側が罰則のあるルールを踏み外している状態です。

そして本人にとっても損です。労災として処理されていれば、 治療費は全額、休業した分も、後遺障害が残った場合の補償もつながっていきます。 その場の治療費だけ現金で受け取って終わりにすると、後から症状が悪化したときに何も残っていません

やることを順番に

  1. 病院で「仕事中のケガです」と必ず言う。健康保険証を出す前に伝える
  2. その病院が労災指定かどうかを聞く。指定なら様式第5号、指定外なら様式第7号
  3. 領収書を全部取っておく(通院の分も)。請求の時効は2年
  4. 会社に労災として処理するかを確認する。渋られても手続きは進められる
  5. 証明がもらえないときは、証明欄が空のまま労働基準監督署へ持っていく。 迷ったら労災保険相談ダイヤル(0570-006031)でも聞ける

この記事は厚生労働省・都道府県労働局の公表資料をもとに、現場での経験を添えてまとめたものです。 個別の事案の判断は、所轄の労働基準監督署の判断が優先されます。 制度の内容は改正されることがあるため、手続きの際は最新の様式と案内を確認してください。

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